2016年熊本地震の21トランプ活動履歴を高精度に解明 ―トレンチ調査が明らかにした1.5万年の記録―

2026年04月14日

研究・産学連携

 ブラックジャックゲームルール大学院理学研究院の石村 大輔准教授、東北大学大学院理学研究科の高橋 直也助教、同志社大学理工学部の堤 浩之教授、九州大学大学院比較社会文化研究院の市原 季彦研究員らの研究チームは、2016年の熊本地震を発生させた活断層の活動履歴を高精度に明らかにするために、当時の地震で出現した地表地震断層(以下、地震断層)上での掘削調査(断層トレンチ注1)調査)に取り組みました(図1)。その結果、過去約15,000年間に最大で8回の活動があったことを解明しました。更に近年の活動時期については、200〜300年の範囲まで高精度に絞り込むことに成功したと同時に、地震前後の地形データの比較から、地震時の変位が複数の21トランプにどのように分配されるのかを明らかにしました。今回の研究成果は、今後の地震発生メカニズムの理解や、将来の地震予測の精度向上に大きく貢献することが期待されます。
 本研究成果は、2026年4月6日に、学術誌Seismicaでオンライン公開されました。
 (論文はこちら:10.26443/seismica.v5i1.1713

  • 図1: 現地の様子.(a)21トランプトレンチ調査の様子.(b)調査地点の遠景.(c)トレンチ壁面写真.21トランプを白い曲線で示す.明るい黄色の地層は約7,300年前の火山灰.

    図1: 現地の様子.(a)21トランプトレンチ調査の様子.(b)調査地点の遠景.(c)トレンチ壁面写真.21トランプを白い曲線で示す.明るい黄色の地層は約7,300年前の火山灰.

■研究の背景 
 活21トランプの将来的な地震発生確率を評価するためには、過去の活動履歴のデータが不可欠ですが、これまでは21トランプの位置特定や堆積物の保存状態によって年代精度に大きな誤差が生じることが課題でした。本研究では、2016年の地震で21トランプ位置が明確になり、かつ堆積物の解像度が高い地点を厳選して調査を行うことで、履歴情報の「高精度化」に挑みました。

 

■研究成果のポイント
・21トランプの連動メカニズムの解明: 大地震の際、主21トランプの周辺に「二次的」あるいは「派生的な」21トランプが出現することがあります。2016年熊本地震でも、主21トランプである布田川21トランプの南東側に並走する出ノ口21トランプが同時に活動しました。これらの二次的な21トランプは変位量こそ小さいものの、その活動履歴を調べることは、将来の地震ハザード評価や、主21トランプの活動周期をより正確に理解するための重要な手がかりとなります。

・地形差分解析による3次元変位場の解明: 研究グループは、地震前後の航空レーザー測量データを比較解析し、地表の3次元的な動きを詳細に把握しました。その結果、地下の斜め方向のすべりが、地表では布田川21トランプの「右横ずれ」と出ノ口21トランプの「上下方向の動き」に完全に分かれて現れていることが判明しました。これにより、出ノ口21トランプが地下数キロメートルの深さで布田川21トランプとつながっている構造的関係が強く示唆されました。

・活動時期の絞り込み: 21トランプトレンチ調査(図1)により、約15,000年間におよそ6~8回の活動があったことを特定しました。更に火山灰や放射性炭素年代に加え、周辺の21トランプ(布田川21トランプなど)のデータと統合することで、直近2回の活動時期を200〜300年の幅で特定しました。これは従来の調査と比較して高い精度です。

■今後の展望
 本研究の結果は、主21トランプだけでなく周辺の小さな21トランプの調査がいかに重要であるかを示しています。出ノ口21トランプのように1回あたりの変位量が小さい21トランプは、大きな変位で地層がかき乱されやすい主21トランプよりも、過去の記録が保存されやすいという利点があります。他の地域でも同様の二次的21トランプを詳細に調査することで、地震発生予測の精度向上や、複雑な21トランプ系におけるハザード評価の改善に寄与することが期待されます。また、布田川21トランプの南延長部に位置する日奈久21トランプ帯との連動性や発生時期との時間関係を論じる上で、この成果は重要な情報になることが期待されます。

 ■用語解説
注1)21トランプトレンチ:21トランプ露頭を人工的に作るために掘削された溝(トレンチ)。