ブラックジャック攻略~がん細胞の増殖プログラムを書き換える新たな治療コンセプト~
2026年04月09日
研究・産学連携
ブラックジャックゲームルール大学院医学研究院の田中知明教授、宮英博研究員と大鵬薬品工業株式会社の研究チームは、小細胞肺がん(SCLC)注1)の増殖や生存に関する分子機構を検討した結果、LSD1(ヒストン脱メチル化酵素)注2)というタンパク質の働きを阻害する化合物「TAS1440」が、特に神経内分泌型SCLCにおいて重要な転写因子INSM1注3)とLSD1の相互作用を阻害することで、分子ネットワークを大きく変化させてがん細胞の増殖を抑制する分子機構を明らかにしました。 本研究成果は、英国科学誌 Nature Communications に2026年3月25日に掲載されました。(論文はこちら:10.1038/s41467-026-70984-1)
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TAS1440依存的にINSM1及びSMAD2がLSD1複合体から解離し、TGF-βおよびNOTCHシグナル経路が活性化される
■研究の背景 SCLCはブラックジャック攻略中でも進行が非常に速く、再発率が高いことから、現在でも治療が難しいがんの一つです。近年の研究により、SCLCは遺伝子発現の特徴に基づいて複数の分子サブタイプに分類できることが明らかになり、それぞれ異なる分子機構によってがん細胞の性質が維持されています。しかし、これらの分子機構を標的とした有効な治療法はまだ確立されていません。
■研究成果のポイント(詳細は別添参照)1.SCLCの分子サブタイプと薬剤感受性の関係を解明22種類のSCLC細胞株を4つの分子サブタイプに分類しTAS1440に対する感受性を評価した結果、SCLC-Aサブタイプにおいて、TAS1440が特に強い増殖抑制効果を示すことが明らかになりました。2.INSM1–SMAD2–LSD1転写抑制複合体を解離させることを発見SCLC-A細胞では、転写因子INSM1やSMAD2注4)がLSD1と複合体を形成してがん細胞の増殖に関わる遺伝子発現を調節していることが分かりました。TAS1440はLSD1の酵素活性の阻害に加えて、この転写抑制複合体を解離させることが明らかになりました。3.腫瘍抑制シグナル経路(TGF-β注5)およびNOTCH注6))の活性化TAS1440によってINSM1およびSMAD2がLSD1複合体から解離すると、クロマチン構造が変化し、TGF-βおよびNOTCHシグナル経路が活性化されることが分かりました。これにより、がん細胞の増殖を抑制する転写プログラムが誘導されることが示されました。4.INSM1依存的な抗腫瘍効果の実証INSM1を欠失させた細胞では、TAS1440による抗腫瘍作用がINSM1依存的な分子機構を介して発揮されるため、増殖抑制効果が著しく減弱しました。5.マウスモデルにおけるTAS1440の治療効果SCLC-A細胞を移植したマウスモデルにおいて、TAS1440の経口投与により腫瘍増殖を有意に抑制する抗腫瘍効果が認められました。
■今後の展望 本研究は、SCLCにおける遺伝子発現制御の仕組みを理解する上で重要な成果であり、新しい治療標的の可能性を示しています。特に、SCLC-Aサブタイプにおいて、LSD1阻害を標的とした治療アプローチが有効な個別化医療の選択肢となり得る分子基盤が示され、従来の抗がん剤とは異なる新しいコンセプトとして期待されます。本研究で得られた知見は、将来的なSCLC治療戦略の研究基盤として、LSD1阻害を応用したより効果的な治療法の開発につながることが期待されます。
■用語解説注1)小細胞肺がん(SCLC):ブラックジャック攻略一種で、神経内分泌細胞に由来すると考えられている。進行が非常に速く、転移や再発が起こりやすいことから、治療が難しいがんとして知られている。注2)LSD1(ヒストン脱メチル化酵素):ヒストンと呼ばれるタンパク質のメチル化状態を調節する酵素で、遺伝子の発現を制御する役割を持つ。エピジェネティック制御に関わる因子の一つ。注3)INSM1:神経内分泌細胞の分化や機能に関与する転写因子。SCLCなどの神経内分泌腫瘍で高発現することが知られており、腫瘍細胞の特徴維持や増殖に関与すると考えられている。注4)SMAD2:TGF-βシグナル経路に関与する細胞内シグナル伝達タンパク質。リン酸化されることで核内に移行し、遺伝子発現を調節することで細胞の増殖や分化を制御する。注5)TGF-βシグナル経路:細胞の増殖、分化、細胞死などを調節する重要なシグナル伝達経路。がんの初期段階では腫瘍抑制的に働くことが多いが、進行段階では腫瘍促進に関与する場合もある。注6)NOTCHシグナル経路:細胞の分化や発生過程に関わる重要なシグナル伝達経路。細胞運命の決定に関与し、がんの種類によって腫瘍抑制または腫瘍促進の働きを示すことがある。